第28集 つたえてください あしたへ・・・・・・
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私わたちが川かに逃のれると、川かの中なほどに近きょ所のおじさんが小こ舟ぶに乗のって「佐さ々木さーん」って、呼よんでいるんですよ。お人ひ。死しい体がゴロゴロです。そんな中な、私わたち三人には小こ舟ぶに乗の穴あがあいていました。乗のったら水みが入はり、水みがどんどん上あがっ私わたちは流なされんように川かの中なほどに四、五時じん間いました。最さご後の方ほに黒くい雨あが降ふったんです。黒くい雨あは爆ばん心地ちから家いのじさんが「佐さ々木さん、早はく乗のりんさい」と岸きに小こ舟ぶを着つけると、そこは被ひく爆した人ひ、水みを欲ほしがる人ひ、息い絶たえているせてもらいました。小こ舟ぶは原げく爆の閃せう光で底その一部ぶが焼やけて、てくるので、泣なきながら一いう生懸けい命に水みを出だしたのを鮮せい明に覚おえています。あちこちから「乗のせろ~」の声こが聞きこえました。母ははおじさんに「乗のせてあげてください」と頼たんだようです。しかし、おじさんから「佐さ々木さん、ここはね、助たかるもんだけが助たからんといけん。誰だも彼かも乗のせたら、諸もも共死しんでしまう。助たかるもんが助たかる。無むう情のようだけどね。心こを鬼おにしなさい」と言いわれて、母はもそれに従しったから今いがあるんです。おじさんの決けん断が凄すいです。たしじょつだたしめろういろめえ わがかかのんんべくご いろばっはますにこれれすきさすす とはでちじことのの はえずぼしんんおさないずずまんちきかみねこちはちよはとよたとかんねずとばときやきさしねきさね わがわかろためがんよ さきかたういけんえくうぶ8んじたしんばんこっしょんめろところたがんめくしトラックが来きたので、私わたちも乗のせてもらい、上か川立まで行いきました。父ちと母はは、父ちの出しん身地ちが三みし次で、母はの郷さが三みし次のちょっと手てえ前の上か川立だったので、万まが一いの時との疎そい開地ちは上かたちに、兵へい隊さんが乾かパンをくれました。大おきくてカチンコチン、足あで踏ふんでも割われないくらいの乾かパンを、舐なめながら、かじりながら上か川立へ行いきました。は床とや屋を始はめました。近きょ所の人ひから食たべ物もを頂いいたりと、良よくしていただいて、二年ねん間そこにいました。その後ご、広ひま島市しその頃こは配はう給制せど度というものがありました。配くられた切きぷ符を持もっていないと、何なにも買かえない。全すてが統とい制ですよ。抑よょう方ほを含ふめて、長ち楕だ円形に降ふりました。広ひま島市しの一部ぶん分です。私わしたちはその黒くい雨あに打うたれました。火ひもだいぶ治おまったので、横よわ川駅え近ちくの三みき滝にある大おば芝公こ園えに逃のれていきました。夕ゆた方、大おば芝公こん園に三みし次の分ぶい隊に行いくみかわたちわた川かち立と決きめていたのです。朝あからずっと食たべていなかった私わいたみかわたちもと母はの郷さから麓ふに下さがったところで、腕うのいい職しん人だった父ちっぽうちょう鉄て砲町でバラックを建たて、床とや屋を再さい開しました。いきゅつか圧あん感といいますかね。物もがないというのを、現げつ実に感かじるわろしこがうがおしうえたしゅっしんじんかいかおしんたみかわたちたしょくにただろしうせんじ

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