あ と が き広島・長崎に原爆が投下されてから、七七年。戦争を知らない世代が大半をしめ、被爆体験を証言していただける方も高齢となり、直接お話を伺う機会が少なくなってきました。また、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況が続く中、感染予防対策を講じながら、今年は二名の方から貴重な証言をいただき、被爆体験証言集「つたえてください あしたへ……」二七集を発刊する運びとなりました。この証言集は、一九九四年、戦後、被爆五〇年を前に、「被爆の悲惨さ・戦争の愚かさ」を若い世代に語り継ぎたいとの組合員の思いから始まったとりくみです。組合員が中心となり、被爆者の方々から被爆体験をお聞きし、それを書き起こしてまとめたものです。新型コロナウイルス感染症の影響により二〇二〇年春から四度の延期を経て、ようやく八月一日から核不拡散条約(NPT)再検討会議が開幕しました。国連事務総長が会議の冒頭で、「人類は広島と長崎の恐ろしい炎から得た教訓を 忘れつつある」と演説をされました。また、今回初めて日本政府から岸田内閣総理大臣が会議に出席しました。ロシアのウクライナ侵攻により、核の脅威が高まる中での会議開催でしたが、残念ながら今回も合意には至りませんでした。核軍縮・核不拡散のさらなる停滞が必至となり、核兵器のない世界の実現に向けて、今後の行方が気になります。このような社会情勢の中で、私たちにできることは、広島・長崎での被爆体験を風化させないためにも、被爆の実相と被爆者の思いを継承する聞き書き活動を、今しかできない大切なとりくみとして、これからも継続し、多くの方に伝えて知っていただくことです。最後になりましたが、この証言集の刊行にあたり、福岡県原爆被害者団体協議会の皆様のご協力に対し、心より深く感謝申し上げます。二〇二二年九月 エフコープ「聞き書き」活動参加者一同43
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