全世界を震撼させ、社会経済活動に大きな制約をもたらせた「新型コロナウイルス感染症」は、3年あまりの歳月を経て、法的な分類が見直しされ、平時の体制に移行しました。それと前後して世界的に発生した食品・エネルギーなどの需要の回復・増加や国家・民族間の対立、為替相場の変動は、多くの商品やサービスの「値上げラッシュ」につながり、組合員の生活を支えるためのエフコープへの期待とその役割は大きくなっています。前年度に引き続き、2023年度も「消費者物価指数」の上昇率は、高い水準であり、「実質賃金指数」の低迷は続き、私たちのくらしの周りは一層厳しくなっています。エフコープは、これまで以上に組合員や生活者のくらしに寄り添い、活動および事業による生活支援を進めていく必要があります。ロシアによるウクライナ侵攻の緊迫が続く中、パレスチナとイスラエルの間で紛争が勃発したほか、多くの国や地域などで武力紛争が行われており、たくさんの人々が苦しめられています。わが国を取り巻くさまざまな安全保障環境も不安が増す中、あらためて戦争の悲惨さを学び、平和活動の輪を組合員とともに広げていくこと、そして、「食」や「電力」の自給力の向上に取り組んでいく必要を感じます。また、2023年7月に福岡県内を襲った大雨による災害、そして、2024年元日に発生した能登半島地震をはじめ、近年、日本全国で大規模な自然災害が頻発・激甚化しています。災害は生協の活動や事業の運営・継続にも大きな影響を与えるだけでなく、被災した地域は長年にわたり深刻な疲弊に直面しています。災害発生の要因のうち、特に地球温暖化については世界共通の課題であり、気候変動対策を話し合う国連の会議(COP28)でも、「化石燃料から再生可能エネルギーへの転換の拡大」が採択されました。私たちも、地球に優しいサステナブルな活動や事業を進めていくことが重要です。福岡県内の5つの生協の組織合同により1983年に設立されたエフコープは、昨年、40周年を迎えました。長年支えてくださった組合員のみなさまに感謝いたします。組織合同の当初、約6万7,000人だった組合員は56万人を超え、「食」や「商品」のみならず多種多様な思いや願いが寄せられるようになりました。その期待に応えるため、2023年度は新たに新規出店(かすや店)やエフコープ初の事業形態となる「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)事業所」(ぽみえ大野城)の開設、一般財団法人エフコープ社会活動財団の設立(給付型奨学金制度の運用)や「地域の元気応援助成金」制度の創設などに取り組みました。これらの安定的な運営は今後の課題の一つでもありますが、並行して「エフコープ2030年ビジョン」に掲げる施策のさらなる具体化に向けた動きも重要であり、以下の通り、「2024年度方針骨子(案)」を提案します。2024年度は、「エフコープ2030年ビジョン」に掲げた目標の見直しの準備や、「第11次中期計画」の最終年度を迎えるとともに、次期中期計画の策定の準備を行う大切な1年となります。あらためて協同組合の定義・価値・原則についての理解を深め、「エフコープ基本理念~ともに生き、ともにつくる、くらしと地域~」に沿った活動・事業を展開していきます。1.食への思い昨今の物価高騰の影響は、私たち消費者だけでなく、生産者にも大きな影響をおよぼしています。特に、第1次産業においては後継者不足も大きな課題となっています。そこで、組合員による産地、工場、施設の見学や交流の機会を積極的に展開し、「食を選択する力」を育むとともに、共同購入事業や店舗の売り場においても再生産可能な適正価格での消費に向けたとりくみを進めます。2.ひとへの思いまもなく団塊の世代すべてが後期高齢者となるとともに、すでに「人生100年時代」ともいわれる超高齢社会に到達していることを受け、高齢者福祉事業をはじめ、生涯にわたり組合員のくらしを支えることができる事業の展開を進めます。また、多くの子どもたちが少しでも充実した学校生活を送れるよう、「奨学生応援サポーター」の輪を広げるなど、新たに創設した給付型奨学金制度の安定的運用を行うほか、子育てを応援する各種活動に積極的に取り組みます。3.未来への思いわが国の生協の歩みを振り返ると、過去の戦争により、多くの組合員の生活や生命のほか、生協組織そのものまでもが奪われました。また、近年では地球環境問題が私たちのくらしや健康にとって大きな課題となっています。これらについて、未来を担う子どもたちのためにも、まずは私たちが正しく学び、伝え、実践する活動を展開していきます。事業面では「コープでんき」の普及を推進します。4.事業経営福岡都市圏に象徴される都市部への人口の集中の一方で過疎地域も増加し、生活必需サービスの維持が困難となっている事例も見受けられます。また、人口のみならず、これまで増加し続けてきた世帯数についても減少に転じるという推計もあります。そこで、県内一律だけではなく、地域に応じた事業・サービスの展開を創造していきます。新規事業の内部公募制度の運用を進めるほか、コスト増加が避けられない中、デジタル技術の導入などによる生産性の向上をはじめとした経営構造改革を進めます。5.組織づくり・人づくり掲げるすべての事項について、より一層の組合員の理解と参加・参画を追求します。また、今後の生産年齢人口の減少を見据えると、将来にわたって生協の活動や事業を永続的に発展させるためには、人財の確保とともに、多様な人財が活躍し長く働き続けることができる職場づくりが重要です。そのためにも、処遇改善とともに、役割や年齢、経験などにかかわらず誰もが意見を発信し、実現をめざせる人事制度づくりを行います。また、日常において、互いの行動を評価し、光を当てる組織風土をめざします。6.豊かなくらしと地域県内自治体との連携が進んでいます。生協と地域の間をコーディネートできる人財の開発を進め、地域コミュニティの活性化をめざすほか、さまざまな地域課題に向き合い、地方公共団体などとの信頼関係を構築し、包括連携協定の締結などにつなげます。また、近年相次ぐ、自然災害に備えた防災・減災活動や、災害後の復興応援活動に積極的に関与します。2. 2024年度骨子2024年度取り組むこと1. 基調52
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