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ボートレーサーの妻を支えて ボクは主夫歴23年! 第2話

2019年03月09日

ボートレーサー(競艇選手)である妻を支えながら家事や育児に専念し、今年21歳と19歳になる2人の娘を育ててきたベテラン主夫の日高邦博(ひだかくにひろ)さん。前回は、日高さんがごく普通のサラリーマンから主夫業へ転身する経緯や、育児のあれこれについてご紹介しました。
そんな日高さんが今、男性として家事や育児をこなしてきたからこそ思うことや、子育て中の方へ伝えたいこととは?

「子育て」が「孤育て」にならないように

子育てをテーマにした講演会で、日高さんが母親に伝えていることのひとつが、「子育て」が「孤育て」にならないようにしてほしいということです。

日高さん:
「子育てをする環境で一番良くないのは、周りに頼る人や相談できる人がいない状況。家にこもって親子だけの閉鎖的な時間を過ごすことで、ストレスや育児の悩みがどんどん増幅して鬱状態になったり、子どもに辛くあたったりというケースも多いと思うんです。
子育てが自分の『孤』を育てることにならないよう、一人で抱え込まずにぜひ、ママ友でも近所の方でもいいので、身近にいる方と積極的にコミュニケーションをとってほしいと思います。僕もママ友にはかなり助けてもらいました。
地域の公民館の館長さんなども、子育てについての知識をお持ちなので、困ったことがあったらぜひ相談してみては」

自分がラクになれる子育てを

逸子さんのこだわりである「布おむつ」と「母乳育児」を頑張った日高さん。「その大変さを知っていたら、『いいよ』とは言わなかったかもしれません(笑)」と語ります。

日高さんはまた、完璧を求めず、無理をせず、自分がラクになれる子育てをすることもすすめます。

日高さん:
「ネットなどで子育て情報があふれているせいもあって、最近のお母さん方はどうしてもそれらの情報にとらわれがちです。でも、子育てに完璧を求めずに、少しでも自分が楽しく子育てができる(時にはラクできる)方法を選んでほしい。これは2人の娘を育てた僕の経験から実感できることです。
育児にどれだけこだわっても、育てる側がそこにストレスを感じて元気をなくしたり、笑顔を失ったりすると、間違いなく子どもに悪影響を及ぼします。
子育てに正解はありません。だとしたら、ミルクもおむつも離乳食も、自分にとって無理がなく、自分も子どももハッピーになれる方法を選ぶことがベストだと思います」

男性にできない家事や子育てはない

日高さん:
「子どもを産むことや母乳を直接与えること以外、女性にしかできない育児や家事なんてありません。女性がみんな、家事が得意なわけはないし、料理や皿洗いが好きな男性だっていっぱいいる。料理も掃除も洗濯も、もちろん子育てのあれこれも、得意な方がやればいいわけです。
僕は“イクメン”とか“カジダン”という言葉が嫌いで(笑)、講演会のたびに、『そういう言葉は使わないようにしましょう』と伝えています。そうやって、育児や家事をする男性をもてはやす必要はないし、男性が家事や育児をするのもごく当たり前のこと。逆に、家事も子育ても女性にはかなわないなんてことも思いません。
夫婦でお互いに相手を思いやりながら、妻と夫という立場を超えて、同じ目線で子どもを育てることが大切なんです」

誰が育てたかではなく、どう育てたか

日高さん:
「子育ての要は、誰が育てたかではなく、どう育てたか。これに尽きると思います。
どう育てたかというのはつまり、子どもにどれだけの愛情を注げたかということ。シングルマザーでもシングルファーザーでも、たとえ祖父母に育てられようと、愛情をかけて育てられた子どもは、必ずまっとうに成長します。
わが家だって、よそから見たらかなり特殊な家庭ですが、娘たちは幼い頃から『うちはママが働いて、パパがご飯を作るおうち』と認識していたようで、多分、特別に違和感もなかったのではないかと思います。
妻は月に数日、家にいるわずかな時間で娘たちに精いっぱい愛情を持って接していましたから、娘たちが不満を感じることもそんなにはなかったのではないでしょうか」

子育ては、人の命を預かる重要な仕事

日高さん:
「子育てを始めた当初は、正直、『男がこんなことをやっていていいのか』と思うこともありました。でも、子育ては人の命を預かるという最も責任が重く、大切な仕事です。
サラリーマンなら、仕事が嫌になったら途中で辞められるし、自分の代わりはどれだけでもいるわけですが、子育てを途中で放り出すことはできません。ましてや自分たちの代わりになる人なんていません。そう考えると、子育てってとてつもなく素晴らしい仕事だと思いませんか? そういう意味で、主夫という仕事を与えてくれた妻には感謝しています。
今は、引退後の妻と今後どうやって二人の時間を過ごしていこうかと思案中です。何しろ23年間の結婚生活の中で、一緒に過ごした時間はたかだか10年にも満たないわけですから(笑)」

実にあっけらかんと、しかも楽しそうに、これまでの主夫業について語ってくださった日高さん。ご自身の経験にもとづいた、説得力のあるたくさんのアドバイスは、子育て中の方の大きな励みになったのではないでしょうか?
妻と娘たちに囲まれた日高さんの主夫業は、これからも続きます。

編集:神代裕子 文:丸山砂和 写真:川上信也

Profile

日高邦博(ひだかくにひろ)さん
1961年生まれ。23年にわたる主夫業のかたわら、男の家事や育児などに関して各地で講演を行う。ボートレーサーである妻の日高逸子さんは、女性ながら数少ないA1級で活躍中。著書に『逸子さん、僕が主夫します!』(中日新聞社)。

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