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ミニマリスト・やまぐちせいこさんの“できるだけ持たない”豊かな暮らし 第3話

2018年12月11日

身の周りに必要な、最小限のモノだけでシンプルに暮らすミニマルというライフスタイルが注目されています。大分県在住のミニマリスト・やまぐちせいこさんに、1話2話で、ミニマルライフに至るまでの経緯やミニマルなくらしで得られるものなどについてインタビューしました。3話目は、やまぐちさんが実践しているミニマルライフの考え方について紹介していただきます。

「いつか使う」「いつか着る」日はやってこない

ミニマルライフを始める前のご自宅。片付いてはいるものの、現在よりはるかにモノが多いのがわかります。

ミニマルライフの基本は、モノを持たない、そして増やさないこと。多くの女性と同じように、かつては身の周りにモノがあふれていたというやまぐちさん、それらとどのように“決別”できたのでしょうか?

やまぐちさん:
「家の中のモノを減らすのは簡単なことではありません。ほとんどの場合、『いつか使うかも』『いつか着るかも』という思いや、『お金を掛けて買ったものだから』という後ろめたさがあって、なかなか処分できないんですね。

でも、『今、使ってないモノは今後も使わないモノ』であり、『今、着ていない洋服は今後も着ない洋服』なんです。いくらお金を掛けて買ったモノであっても、それを手に取らなくなるということは、この先それは自分にとって必要としないモノ。ミニマルライフで大切なのは、ただ単にモノを処分したり減らしたりすることではありません。自分にとって必要なものとそうでないものを取捨選択する力を養うことです」

何が自分に「ムダなものを買わせているのか」を知る

モノを増やさないためには、モノを買わないこと。でも、お金さえ出せばいつでも手軽にモノが手に入る私たちのくらしの中で、それはなかなかハードルが高いことのようにも思えるのですが…。

やまぐちさん:
「必要のないモノを買わないようにするためには、まず、自分の中の何がモノを買う衝動に走らせてしまうのか、何がトリガー(引き金)になっているのかを考えること、つまり自分を知ることです。

例えば、夫が飲み会で帰りが遅い夜、子どもが寝静まった後にパソコンやスマホを開いて通販サイトをチェックしてしまう。そこで気に入ったものを見つけると、『夫ばっかり楽しんでずるい!』みたいな気持ちも手伝って、ついポチッとしてしまう…。これ、思い当たる方多いんじゃないでしょうか(笑)。もし自分にそういう傾向があると思ったら、そういう日はネットを見ないようにすればいいんです。

私も以前、100円ショップで雑貨を大量買いしていた時期がありました。でも、ミニマルライフを意識し始めると、お店でモノを手に取ろうとする自分に対して、もう一人の自分が『それホントに使う?』『今必要なものなの?』と囁くように(笑)。もう一人の自分が、ダメな私の消費行動にブレーキをかけてくれるようになりました」

失敗を繰り返してこそ、自分がわかってくる

モノを持たないやまぐちさんの、数少ない愛用品。「愛用していますが執着はしていないので、ライフスタイルと合わなくなれば処分する」とやまぐちさん。(写真上)6〜8年以上使っている市場カゴ。主に収納用品兼インテリアとして使っています。(写真中)洗剤の詰め替え用として使っている「無印良品」の入浴剤用のケース。(写真下)スープ皿兼グラタン皿として使っている、100円ショップの食器。

やまぐちさん:
「そうやって自制心が働くようになったのは、私がこれまでいろいろなものを買って何度も失敗してきたから。失敗を重ねて、ようやく自分を知ることができました。
だから、買いたいモノをすべて我慢すべきだとは私は思わないし、欲しいモノは買ってもいいと思います。

むしろ大切なのは、その後、手に入れたものをしっかり使ったか、ちゃんと袖を通したかなんです。もしもそうでなかったとしたら、何が自分に合わなかったり、気に入らなかったりしたのか。そこを突き詰めていけば、自分の好みや、自分にとって本当にいるものかがわかってきて、同じ過ちを繰り返さないようになるでしょう。そのために使ったお金は、自分を知るための授業料だったと思えばいいんです」

部屋が広くても、モノはできるだけ置かない

やまぐちさん宅の広々としたリビングに置いてある家具は、こたつにもなるローテーブルがただ一つ。床にはじゅうたんと座布団のみ。これだけスペースがあると、ついインテリアを増やしたくなってしまいますが…。

やまぐちさん:
「部屋が広いからと、モノを置いてしまっては元も子もありません。確かに、私も『この部屋に大きなソファーでもあればなぁ』と思ったりはしますが…。でも、自分の欲求だけでソファーを買っても家族は喜ばないだろうし、それで私が自己満足に浸れるのもたぶん最初の1カ月ぐらいでしょう。ソファーを置くことで、確実にその下の掃除が面倒になるのは目に見えていますし、次の引越しの時も、新しい部屋にそのソファーが入るかどうかなども含め、きっとかなり苦労するはずです(笑)」

洋服は季節ごとにテーマを決めて“制服化”する

(写真上)夫婦二人分の洋服はこれがすべて。(写真下)突っ張り棒を使って押し入れを前後に分けることで、「今着る服」は取り出しやすい前に、季節外の服や冠婚葬祭用などは後ろに置いているのだそう。

ミニマルライフを実践する中で、やまぐちさんが最後までなかなか処分が進まなかったのが洋服。現在は、これが夫婦のすべての衣類だそうです。

やまぐちさん:
「洋服は、モノトーンや紺系で統一したものを季節ごとに『パンツスタイル』『ワンピース』など自分でテーマを決め、そのスタイルを“制服化”しています。
ちなみに、今年の秋冬のテーマは『モノトーン』。毎日ある程度決まった服を着るので、同じ洋服を複数持っていたりもします。

制服化しておくと、外出の際に服装であれこれ悩んだり、泊まりの仕事の時に荷物が増えたりすることないので本当にラクチン。仕事や家事など、その日にやらなければいけないことに最大限の時間を使うためにも、何を着て行くかで悩んで時間を費やしてしまうのは大きなロスになると思います」

少ない服に変化を付けてくれるアクセサリーも、「ここに置ける分だけ」と量を決めています。

やまぐちさん:
「とはいえ、私ももともとファッションは大好きなので、服装がシンプルな分、今はイヤリングやブローチなどのアクセサリーで変化をつけて楽しんでいます」

ミニマルライフは、心のありよう

やまぐちさん:
「ミニマルに暮らしていると、本当に欲しいモノがきちんと見極められるようになります。そうすると普段、衝動買い“やとりあえず買い”で無駄なお金を使っていない分、自分にとって必要なモノに出合った時、それが多少高かったとしてもそこにきちんとお金を掛けられるようになるんです。

『ミニマリスト』というのは、ただ単にモノを持たないくらしではなく、“心のありよう”だと私は思っています。自分にとって、家族にとって、本当に必要なものが何かを見極め、そのためには何を手放すべきか、何を手元に残しておくべきか。その判断がきちんとできて、くらしの中で実践できる人。それが私の考えるミニマリストです」

いろいろな紆余曲折や失敗を乗り越えてたどり着いた、やまぐちさんのミニマルライフ、いかがでしたか? ムダなモノを少しでもなくすことで得られる快適さは、参考になることも多いのではないでしょうか。

次回は、やまぐちさんが力を入れて取り組んでいる、発達障害を持つ方の部屋づくりの考え方やアプローチの方法などについてご紹介します。

編集:神代裕子 文:丸山砂和 写真:平川雄一朗

Profile

やまぐちせいこさん
ミニマリスト、ライフオーガナイザー、整理収納アドバイザー。ブログ「少ない物ですっきり暮らす」運営。結婚後、夫の度重なる転勤を機にミニマルな暮らしを実践。現在は講演活動の他、個人宅の整理収納アドバイスや、発達障害を持つ自身の娘の部屋づくりの経験から、「発達障害×片付け」をキーワードに活動中。著書に『少ない物ですっきり暮らす』(ワニブックス)、『シンプル思考ですっきり身軽に暮らす』(マイナビ出版)、『無印良品とはじめるミニマリスト生活』(KADOKAWA)など。

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