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ミニマリスト・やまぐちせいこさんの“できるだけ持たない”豊かなくらし 第2話

2018年12月10日

大分県在住のミニマリスト・やまぐちせいこさんの、できるだけモノを持たないシンプルなくらしについてお話をお聞きしています。第1話では、やまぐちさんのこれまでの生活や、ミニマリストをめざすようになったいきさつなどについてお聞きしました。第2話となる今回は、ミニマルライフによって家族にどんなメリットが得られたのか、さらにお話を伺います。

まず、家の中のシステムを家族と共有する

家族みんなが使うモノだけが置かれたリビング。きちんとラベルが貼られており、何をどこに置くかが明確になっています。

現在、高校1年生の長男と中学2年生の長女、そして夫の4人で暮らすやまぐちさん。昨年12月に引っ越してきた広々とした古民家は、子どもが二人いるとは思えないほどスッキリ片付いています。

山下さん:
「家の中では、お母さんだけがせっせと片付けに精を出し、何がどこにあるかが自分にしかわからないという状況になりがちです。でもそれが、家の中の収納が長続期せず、いつの間にかリバウンドしてしまう大きな原因となっています。

収納や整理整頓といった家の中の“システム”を自分一人で実践することは不可能です。家族全員でその仕組みを共有し、みんなで協力し合わなければならないのは当然ですし、もちろんわが家でもそういうふうにしています。

夫は独身時代からモノを持たないタイプだったので、現在のミニマルライフに違和感はないようです。息子も同じようにモノへの執着はほとんどありませんが、娘はどちらかというとモノをため込むタイプ。娘は発達障害を抱えていることもあって、誰でも簡単にできそうなことが娘にとっては難しく。いろいろな試行錯誤を重ねた上で、今はなんとか自分で片付けができるようになりました」

モノが多いと探しものの時間も増える

やまぐちさん:
「人は1日に平均30分は探し物をしているというデータをご存じですか?
わが家も、ミニマルライフを実践する前、特に子どもが小さかった頃は学校の道具とかプリントとか、『あれがないこれがない』『お母さん、あれ知らない?』と家の中でモノを探していることが多くて。私もイライラしてついカッとなってしまい、親子でケンカになることもしばしばでした。

家の中に7本もあったはずのはさみの行方がすべてわからなくなったこともあって、『ないはずないでしょー!?』となったこともあります(笑)」

モノが減ることで子どもたちの忘れ物も減る

やまぐちさん:
「そんなでしたから、以前は子どもたちが学校でその日に必要なものを朝から慌てて探すことも多々あって。当然、忘れ物もしょっちゅう。先生にもよく叱られていたようです。でも、家の中のモノを減らしたことで、モノの居場所がわかりやすくなり、探し物をしている時間が格段に減りましたし、子どもたちの忘れ物も減りました。

忘れ物をしないって、すごく単純なことなんですが意外と簡単に『自己肯定感』を得られる方法なんです。

忘れ物が減って先生から叱られなくなると、子どもたちにとっては、叱られることで感じる『自分を否定されている』感覚がなくなる。『やるべきことをちゃんとやれている』ということは、ちょっと大げさかもしれませんが、生きる上での大きな自信にもつながる大事なことなのではないかと思います。
もちろん、何がどこにあるかがひと目でわかれば、家族がいちいち私に聞かなくてすむので、私も家事の手を止めることもなく、家事時間の短縮にもなります」

モノの収納場所をわかりやすく表示

そんなやまぐちさんのお宅は、家族での家事シェアが基本。そのためにも、すべてのモノの居場所を明確に表示しています。

やまぐちさん:
「例えば洗面所では、子どもたちが入浴後に自分で着替えができるよう、家族の名前を貼った衣装ケースに下着や肌着を仕分けしています。また、洗ってあるけれどまだ衣装ケースにしまう前の服は、今から洗うものと誰が見ても区別がつくように、ランドリーボックスにそれぞれタグをつけて設置しています。

リビングに置いているのは、基本的には、薬やグルーミングの道具など、家族みんなが使うモノだけ。それらも『使ったら戻す』ができるように、置き場所にラベルを張ってわかりやすくしています。

こんなふうに、何がどこにあるかがわかるようにしておけば、家事の分担もしやすいし、それぞれが使ったモノをほったらかすことなく、元の位置にしまいやすくなります」

台所は料理担当の夫の領域

キッチンは家の中で最も片付かない場所の一つですが、やまぐちさん宅は見事にこの通り。モノが少ないことにも驚かされます。

やまぐちさん:
「私は料理が苦手。夫は料理が苦にならないタイプなので、食事の支度や後片付けは夫が担当しています。だから、キッチン周りはすべて夫のやりやすい形に。私なら食器なども見えないように収納したいところですが(笑)、息子が後片付けを手伝うこともあって、どこに何があるかがひと目でわかるようにしておいたほうがいいだろうと、今の形にしています。食器や鍋、道具類もここにあるものがすべてですが、不自由はありません」

食品などの在庫はホワイトボードで一目瞭然

手作りのキッチンカウンターの下は、食品や日用品などをストックするスペース。壁にかけたホワイトボードを見れば、それらのストックの有無がひと目でわかるようになっていました。

やまぐちさん:
「以前は近所にスーパーやドラッグストアがあったので食品などのストックもしていなかったんですが、今は最低限のものだけはそろえておくようにしています。

ホワイトボードは左側が『在庫なし』、右側が『在庫あり』のリスト。在庫を取り出したら、取り出した人がタグを『在庫なし』に移動させることで、誰が見ても在庫の有無がわかるようにしました。夫や私が出かける際に在庫なしのタグをチェックして買い足して、そのタグを在庫ありの方に移動させます」

家の中でも、太陽の光を存分に感じられるように

もう一つ、やまぐちさんがミニマルライフで得られるようになった大切なこと、それは、家の中に射し込む光の美しさを感じるようになったことだとか。

やまぐちさん:
「今住んでいる家は窓が多く、太陽の光が長時間、部屋に差し込むように建てられています。モノが少ないと、家の中に入る光を遮ることもないし、射し込んでくる光が本当にきれいだなと感じられます。これはとても贅沢なことだなと思います」

身の周りにあふれるモノに隠されて、私たちには見えていないことや気付いていないことがたくさんある。そんなふうに思えた、やまぐちさんのインタビュー。持たないからこそ得られる心の豊かさを教わったような気がします。

3話では、やまぐちさんが実践している実際のミニマルライフの考え方についてご紹介します。

編集:神代裕子 文:丸山砂和 写真:平川雄一朗

Profile

やまぐちせいこさん
ミニマリスト、ライフオーガナイザー、整理収納アドバイザー。ブログ「少ない物ですっきり暮らす」運営。結婚後、夫の度重なる転勤を機にミニマルな暮らしを実践。現在は講演活動の他、個人宅の整理収納アドバイスや、発達障害を持つ自身の娘の部屋づくりの経験から、「発達障害×片付け」をキーワードに活動中。著書に『少ない物ですっきり暮らす』(ワニブックス)、『シンプル思考ですっきり身軽に暮らす』(マイナビ出版)、『無印良品とはじめるミニマリスト生活』(KADOKAWA)など。

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