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ミニマリスト・やまぐちせいこさんの“できるだけ持たない”豊かなくらし 第1話

2018年12月08日

最近よく耳にする「ミニマル」、その言葉の意味は「最小限」。そして「ミニマリスト」とは、無駄なモノを持たずに、生活に必要な最小限のモノだけで暮らす人のことを言います。

福岡県出身で、今は大分県にお住まいのやまぐちせいこさんは、今でこそ本やテレビなどで広く知られるようになった「ミニマリスト」の先駆け。育ち盛りの子ども2人と夫の4人家族のご自宅は、どこを見渡しても驚くほどスッキリと片付いていました。やまぐちさんのお話をお聞きしながら思ったこと、それは、モノを減らすことで得られる、日々のくらしと気持ちの豊かさ。どこまでもシンプルなやまぐちさんのミニマルライフ、その考え方や方法を3話にわたってお届けします。

引越しを繰り返す中で実感したモノの多さ

少ないモノで暮らす日常のあれこれを綴ったブログが共感を呼び、数冊の本を出版。そのどれもが大きな話題を集めたミニマリスト・やまぐちせいこさんが“ミニマル”な生活に目覚めたのは、結婚後の度重なる引っ越しがきっかけでした。

やまぐちさん:
「夫の転勤で、結婚してから18年間で8回の引っ越しをしたんですが、荷造りのたびにモノが出てくる出てくる(笑)。『わが家ってこんなにモノがあったんだ!』と、その多さを目の当たりにしていつもうんざりしていました。そしてそのたびに、『これじゃいけない』と自分なりにちょこちょこモノを減らしてきたつもりなのに、次の引っ越しの準備に取り掛かるとまた同じ状態におちいって憂鬱な気分になるんです。

その繰り返しの中、今後も夫の転勤が続くことを考えると、さすがにこの、あふれんばかりのモノをなんとかしなければと思い知らされたんですね」

あふれるモノのために掃除が行き届かず

やまぐちさん:
「これもモノの多さゆえのことですが、新居を内覧した時は『すごく素敵な部屋だなぁ』と思っていたのに、自分たちがそこで何年か暮らした後、退去のために荷物を運び出した後の部屋を見渡してみると、なんだかすごく汚ない(笑)。『なんでこんなに汚れてるの?!』と唖然とすることがたびたびでした。

自分の中ではちゃんと掃除をしていたつもりだったのに、行き届いていないのは間違いなくモノが多いせいなのだろう、と」

モノがなければ掃除もラク!

子育てをしながら一時的に仕事をした時期はあるものの、基本的には専業主婦だったやまぐちさん。インテリアも雑貨も大好きで、ハンドメイドも得意ということで、ご自宅にはさまざまな北欧雑貨や手作りのモノもあったそうです。

やまぐちさん:
「引っ越しを繰り返しながら、モノを持たないことに本気で取り組み始めたのは長男が幼稚園、長女が3歳の頃だったと思います。
ある時、テレビ台を1カ月ほど拭いていなくて、ふと気付くとホコリだらけになっていたことがありまして(笑)。その時はさすがに、『専業主婦で1日中家にいるのに、掃除ひとつできてないじゃないかー!』と激しく落ち込みましたね。

じゃあ、どうすれば掃除しやすくなるのかと考えてみると、そう、モノがなければいいんです。

テレビ台や棚の上にモノがあると、いちいちそれらを動かして拭かなくちゃいけない。それで掃除が億劫になるなら、最初からモノを置かなければいいんだという、実にわかりやすい結論に達しました」

モノがないってこんなに気持ちいい!

やまぐちさん:
「その後は、とりあえず部屋のあちこちに置いたり飾ったりしていた雑貨類をダンボールにしまい込みました。
そうやってモノをできるだけ片づけて、食卓を拭くついでにテレビ台や棚も一緒にチャチャッと拭くようにしたら、『あら!何の手間もかけずにサッときれいになる。なんだ、私だってできるじゃん!』という感じです。

そういうふうにして、モノをなくして掃除が行き届くようになると、同時にモノがないことの爽快感みたいなものを実感できるようになったんですね」

「引き算のインテリア」で洗練された部屋を

(写真上)ほとんどモノがないため、爽快感を感じるリビング。(写真下)4人家族全員分の靴が置かれた靴箱。モノが少なく、スッキリしとした玄関です。

やまぐちさん:
「そうこうする中で私が気づいたのが、『引き算のインテリア』という考え方です。それまで私は、インテリアというのはいろいろなモノを飾る、つまり部屋に何かを足すことで素敵になっていくものだと思っていました。でも、実はそうではなくて、逆に引き算していくことで生まれる素敵な空間もあるんですね。

たまたまその時期に見ていたインテリア雑誌やカタログでも、特にあれこれ小道具もなく、シンプルなのにとてもセンスがよくて洗練された部屋が紹介されていたりして、そういうインテリアの世界観もあるんだということを知ったんです」

以来、やまぐちさんは家の中を“飾ること”をやめてみようと決意しました。

減らしているつもりでも、減らないモノたち

クローゼットとして使っている押し入れも、必要なモノしか入っていません。

やまぐちさん:
「ちょうどその頃立ち上げたのが、『少ない物ですっきり暮らす』というブログです。まだ“断捨離”という言葉すらない時期でしたが、ブログの中でモノを持たないライフスタイルを提案するために、当時は実生活でいろいろなことにチャレンジしていましたね。

今のミニマルライフにつながる大きなきっかけとなったのが、クローゼットの整理。ブログで紹介するために、クローゼットの中のモノを10分で出して、10分で中を拭いて、10分で戻す。30分でクローゼットを片づけることにチャレンジしたことがあるんです。

でも、まぁ見事に失敗(笑)。中のモノを出すだけで40分もかかってしまいまして、『これはダメだ』と。減らす減らすと言っているのに、全然モノが減ってない。自分が思っている以上に、実はモノを持っているということに改めて気づかされたんです。そこからさらに本気でミニマルなくらしを考えるようになりました」

多くの人が経験しているであろう、モノの多さゆえの悩みが発端となって始まったやまぐちさんのミニマルライフ。2話では、モノを持たなくなったことで、やまぐちさんとご家族のくらしにどのような変化があったのか。そのことについて詳しく伺います。

編集:神代裕子 文:丸山砂和 写真:平川雄一朗

Profile

やまぐちせいこさん
ミニマリスト、ライフオーガナイザー、整理収納アドバイザー。ブログ「少ない物ですっきり暮らす」運営。結婚後、夫の度重なる転勤を機にミニマルな暮らしを実践。現在は講演活動の他、個人宅の整理収納アドバイスや、発達障害を持つ自身の娘の部屋づくりの経験から、「発達障害×片付け」をキーワードに活動中。著書に『少ない物ですっきり暮らす』(ワニブックス)、『シンプル思考ですっきり身軽に暮らす』(マイナビ出版)、『無印良品とはじめるミニマリスト生活』(KADOKAWA)など。

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