コラム

日常のしつけが上手くいかない!? それは力のかけすぎかも?

2018年11月06日

より良い親子関係をつくるためのプログラム「アクティブ・ペアレンティング」のトレーナー・野口紀子さんが、子育てが楽しくなる話を綴ります。


 

ある休日、お母さんと一緒に2歳と4歳の兄弟がわが家に来ました。お母さんは勉強をしに来ていたので、その間は、当時高校生だった私の息子が2人の遊び相手をしてくれていました。

昼食の時間になり、事前に準備していた焼きそばがのったホットプレートをテーブルの上にセットすると、みんなは「わー!」と言いながら、各々手を洗い、食卓の周りに集まってきました。
でも、2歳のRくんだけがモジモジしていて部屋の隅に立ったままです。「Rくん、手を洗っておいで」と言うと、にらみつけたようにして首を横に振ります。

その反抗的な態度にムッときたお母さんが、R君のそばに駆け寄りました。「ほら、手を洗わないとご飯が食べられないよ」と、はじめは優しく声を掛けていたお母さん。しかし、Rくんは両手を後ろに回し、頑としてその場を動こうとしません。お母さんの声も「ほら!」「もう!」と、次第に強くなっていきました。

私はRくんのそばに行き、静かに「手を洗ったら一緒に食べようね」とだけ言って、席に戻り、お母さんにも席に戻るように促しました。お母さんは「このお行儀の悪い子をどうしたものか!?」という雰囲気ですし、4歳のお兄ちゃんも今後の行方が気になるのか少し緊張している様子。
しかし、私は「さあ、いただきましょう!」と食べ始め、このような状況に慣れている私の息子も素知らぬふりで食べ始めました。それを見て、お母さんも4歳のお兄ちゃんも食べ始め、すぐに楽しい食卓になりました。

ほどなくして、Rくんが明らかにモゾモゾとしています。それに気が付いた私の息子がそっとそばに行き、「手を洗いに行く?」と小さな声で訊きました。Rくんは大きく頷き、息子の案内で手を洗いに行き、それからテーブルの近くまで来ました。少し恥ずかしそうな様子です。私は、ニッコリと笑いかけ、手を洗ってきたことは知ってはいましたが、敢えて「手を洗ってきたの?」と聞きました。すると、Rくんはサッと両手を前に出し、モミジのようなかわいい手のひらを広げて見せてくれました。
私はその手を取り「まあ、きれいなおててだこと!これで焼きそばが食べられるね。良かった!Rくんとも一緒に食べたかったのよ!」と言いました。
Rくんは自分を誇った様子でニコニコしながら席に着きました。お母さんもお兄ちゃんもひと安心。うれしさで顔がほころんでいました。

親はしつけをしようと一生懸命なのに、子どもがなかなか言うことを聞かない時、親はつい怒りがちです。でも、子どもに言うべきことは、実はとてもシンプル。上記の例でいえば、「手を洗ったら食べようね」ということだけです。子どもは、手を洗わなければいつまでも食べることができません。そのまま「ごちそうさま」になってしまうなら、それでいいのです。このようなしつけの仕方を「論理的結果」と呼びます。怒らずにしつけができる方法です。

これを使う時に気を付けることは、肯定的に優しく言うこと。「洗わないと食べられないよ」と否定的に言うと制裁的になります。親が力で押し付けている感じがするので、子どもは従いたくありません。より反抗的にもなります。それに対して「洗ったら食べようね」は、みんなに共通のルールやマナーであり、親も子もみんながしなければならないことです。この言い方なら制裁的にはなりません。

子どもをしつける目的は、社会の中でルールやマナーを守って生きていけるようにすることです。「みんながそうしているのよ」と言うことを、力を入れずに何気なく伝えていく方が、子どもはすんなり受け入れます。親も力まなくていい分、とってもラクですよ!

編集:神代裕子 イラスト:ムツロマサコ

profile

野口紀子(のぐちのりこ)さん
心理学をベースに、さまざまな考え方や技法を取り入れて、より良い親子関係をつくるためのプログラム「アクティブ・ペアレンティング」のトレーナー。25年間で延べ5000人以上の親御さんたちに子どもとの接し方などを伝えている。自身も3人の子どもの母。親子関係・人間関係の悩みに寄り添って改善する「トータルファミリーカウンセリング」を開設。「NPO法人ペアレント・スキルアップ福岡」の理事。

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