コラム

「駄々をこねるから仕方がなく…」という子どもの行動。実は、親が選択しているのです。

2018年09月08日

より良い親子関係をつくるためのプログラム「アクティブ・ペアレンティング」のトレーナー・野口紀子さんが、子育てが楽しくなる話を綴ります。


 

ある日のこと、Y君(3歳)は夕飯の支度をしているお母さんのそばに来て、おかずがたくさん盛られた大きなお皿を「ぼくが運ぶ!」と言い出しました。
お母さんは「これはあなたには重たすぎるから無理よ」と言うのですが、「ぼくが運ぶ」と言って聞きません。
「無理だからやめときなさい!」「ぼく、できる!ぼくが運ぶ!」とのやり取りの後、「もう、仕方ないわねぇ!」と半ば放るようにしてお母さんはY君にお皿を持たせました。そして案の定テーブルまで行きつかずに、Y君はその大きなお皿を落としてしまいました。

「ほらっ!もう!だから無理だって言ったのに!」とお母さん。
Y君は慌てて「ごめんなさい…」と言いながら、すまなさそうにオロオロとしています。
「もう!あっちに行ってなさい!」とお母さんはY君を叱りつけ、片づけに追われることに。忙しい食事の準備がさらに忙しくなってしまいました。

翌日、私に会ったY君のお母さんは「言うことを聞かないのでホントに腹が立って…」と愚痴を言いました。
そこで、私は質問をしました。
「ところで、Y君が煮えたぎっているお鍋を『運ぶ』と言ったらどうしますか?」
「え?そんなの絶対に持たせませんよ」
「どうして?」
「だって危ないから…」
「でも、Y君が運ぶと言ってきかなかったら仕方なしに持たせますか?」
「いいえ、とんでもない!絶対に持たせません!」
「では、どうしてお皿は持たせたのですか?」
そこで、思わずお母さんは考え込んでしまいました。

「お皿は落としても大けがはしない、おかずはダメになるかも知れないけれど子どもには大した被害は及ばない…。そんな計算がちゃんとあったのでしょう?つまり、Y君が運ぶと言ってきかないから持たせたのではありませんよね。あなた自身が持たせることを選択して持たせたのですよ」と、私は説明しました。

親は子どものことを思い、とっさに子どもにとって良いことを選択しているのです。しかし、そのことに親は意外と気が付いていません。
親は親で「させる」という判断をしたにもかかわらず、「子どもが悪い」と怒ってしまって、親も子も嫌な気分になり、関係が悪くなっていくのです。

「お皿を落とすかも?」と予測してもなお、子どもにお皿を渡すことを選んだならば、実際に子どもがお皿を落とした時に「あら、落としちゃったね」と、にこやかにその事実を受け止めましょう。
すると子どもも「これは自分には少し重すぎたのだ。今度は少し軽いものを持とう」と学びます。このようなしつけの方法を「当然の結果(自然の結末)」といいます。親があれこれ指示や説教をせずに、成り行きで起こる結果から学ばせる、という方法です。

親が「当然の結果」を使うとイライラや小言が減り、子どもは親から怒られないので傷つきません。
ただ「ああ、しまった…」と反省をするだけです。その時「ほら見てごらん」と決して言わないこと。言うと子どもを責めることになるからです。
「しまったね」とか「ああ、残念だったね」と共感してあげましょう。すると、「今度は失敗しないぞ。うまくやるぞ」という意欲が子ども自身の中から出てくるのです。

これは親が「当然の結果」であるという自覚を持つことが大事です。「失敗した!」と腹を立てるのではなく「いい経験をしたね」と思ってあげましょう。

編集:神代裕子 イラスト:ムツロマサコ

profile

野口紀子(のぐちのりこ)さん
心理学をベースに、さまざまな考え方や技法を取り入れて、より良い親子関係をつくるためのプログラム「アクティブ・ペアレンティング」のトレーナー。25年間で延べ5000人以上の親御さんたちに子どもとの接し方などを伝えている。自身も3人の子どもの母。親子関係・人間関係の悩みに寄り添って改善する「トータルファミリーカウンセリング」を開設。「NPO法人ペアレント・スキルアップ福岡」の理事。

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